メインタイトル「キャスティングの基礎」

サブタイトル「始める前に知っておくべき基本原理」

　スピンキャスティング（けんぱぱ注：ルアー釣りのことだと思います）の場合、リールからラインを引き出してくれるのはルアーの重さです。フライキャスティングの場合は、フライを魚へと運んでくれるのはラインの重さです。フライキャスティングでは、ラインの重さをキャストするための「ロッドの正しい使い方」を学ばなければなりません。良いフライキャスティングの五つの基本原理に従えば、それが簡単にできるようになります。

　１．キャスティングの際にロッドの先端（ロッドティップ）が指す方向へとライン（とフライ）
　　　は飛びます。

　２．良いフライキャスティングは力任せのものではありません。タイミングによるものです。
　　　つまり、良いキャスターになるためには、あなたはキャストのタイミングをつかむ練習を
　　　しなければなりません。

　３．良いフライキャスティングにおいては、ロッドを適切にストロークし、止めることが基礎
　　　となります。キャスティングストロークの最中にロッドにエネルギーを蓄えるのです。キ
　　　ャストするときにロッドはラインへとエネルギーを解放します。短い距離のキャスト（シ
　　　ョートキャスト）では、キャスターはわずかなエネルギー（短い、少しのエネルギーのス
　　　トローク）をロッドの先端部分に蓄え、長い距離のキャスト（ロングキャスト）では、沢
　　　山のエネルギー（短い、力強いストローク）をロッドの中間部及び根元部に蓄えます。

　４．キャスティングアーク（キャストの際にロッドが描く円弧）は、ショートキャストでは小
　　　さく、ロングキャストでは大きくなります。

　５．キャスティングストロークの後でロッドを止めることは、キャスティングループを作るた
　　　めには最も重要であり、そうすることでロッドの負荷（蓄えられていたエネルギー）が解
　　　放されて、ラインがキャストされるのです。

　実際の釣りにおいてフライフィッシャーは、50フィート（約15メートル）を越えるキャストを必要とすることがまれにあります。ロングディスタンスキャストが今以上にうまくできるようになれば、あなたは全てのキャスティングがうまくできるようになります。まず最初に短い距離（30フィート＝約９メートル）のキャストを学び、それから少しずつ距離をのばす練習をすると良いでしょう。

　本からキャスティングを学ぶことはできません。実際に体を動かさなければなりません。練習を積めば積むほど上達します。芝生かプールで練習して下さい。釣りをしながらのキャスティングは練習になりません。気が散らずにキャスティングの基礎に集中できるのは練習の時だけです。キャスティングの精度（アキュラシー）を高めるためには、地面に標的を置いたり、地面から数フィート上空にフープ（輪）を持ってもらうという方法が良いでしょう。

【準備】

　キャスティングを学ぶのに最も良い方法は、友人や関係者などの熟練のインストラクターから学ぶことです。フライフィッシングスクールやフライショップ、あるいはフライフィッシングクラブでもインストラクターを見つけることができるでしょう。もしそういった人が見つからない場合は、バランスのとれたロッド、リール、ラインを持って、自宅の裏庭へ行きましょう。上空に障害物のない、少なくとも120フィート（＝36メートル）（前後それぞれに60フィート（＝18メートル））の長さの芝生が必要です。

（けんぱぱ付記：アメリカの雑誌ですから、自宅に裏庭があって、しかも広いというのが当たり前なんでしょうねぇ。日本の場合は裏庭があったとしても猫のひたい程度ですから、近所の公園の芝生ってことになるのでしょう。）

　フライラインの先端から30フィート（＝9メートル）のところに消えないマーカーで印を付けて下さい。このマーカーによって、どれだけの長さのラインが出ているのかが判ります。そしてあなたが立っている場所から30フィート、60フィート（＝18メートル）離れた地点に、それぞれ帽子や輪などの目標物を置いて下さい。このように目標物を置くことによって、魚を釣る時に必要になるキャスティング精度を身につけるのに重要になる距離感覚を学ぶことができます。

【グリップ】
　
　あなたのキャスティングハンド（ロッドを持つ手）でロッドをしっかりと握り、親指をグリップの上に置いて下さい。キャスティングを学ぶときは、ロッドの根元があなたの手首及び前腕の下にあり、同時にまっすぐになるように保持して下さい。そうすることでキャストする際にロッドが面内に維持されます。もしキャストの際にロッドが面からずれると、ふらふらと不安定に動くロッドの先端に従ってラインが運動するために、ラインが乱れてキャスティングがうまくいきません。

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「キャスティンググリップ」の図の説明
　適切なグリップ（ロッドの握り方）は重要です。親指をロッドの上に置き、それ
　を保つことは、ストロークの際に力を入れやすしますし、ロッドの先端の向きを
　精度良く向けたり、面内でロッドを振りやすくします。）
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　両足をわずかに開いて芝生に立って下さい。リールからラインを引き出してガイドに通し、ロッドの先端からラインを出して下さい。ラインの先端に９フィートのリーダーを結び、ティペットの先端に短いヤーン（けんぱぱ付記：太いより糸。2cmくらいの毛糸が良いと思います）を結んで下さい。およそ20フィート（＝６メートル）のラインをリールから引き出し、それをあなたが立っている場所の右側（もしあなたが左利きであれば、左側）の芝生の上に横たえて下さい。この時、ラインを真っ直ぐに芝生の上に伸ばして下さい。もしＳ字に曲がった状態で横たえてあると、うまくキャストできないでしょう。

　水平のサイドアームキャストを使って、あなたの体の前のところで、右から左へと（もしあなたが左利きであれば、左から右へと）ロッドをヒュッと振ります。この時、ラインがループを形成し、あなたの左へとロールアウトしていって、その後草の上に静かに落ちる様子を注意深く見て下さい。

　腕全体の動きに加えて手首のスナップを一緒に使って（後方へはフリスビーを投げる要領。そして前方へは野球のボールを投げる要領。）、バックキャストとフォワードキャストの形で、繰り返しラインを前後にキャストして下さい。バックキャストとフォワードキャストの両方において、ラインが「傘の握り手のような形（⊂の形：＊）」のループになるよう、試して下さい。ラインの形状をループ状にすることは、キャスティングにおける目的そのものであり、よりタイトな／より狭いループによってより良いキャストが可能になります。

（＊けんぱぱ付記：原文ではcandy-cane-shapedとあります。candy-caneは「ステッキ状の飴のお菓子」のことだとは思うのですが、日本では余り一般的ではありませんので、ここでは「傘の握り手のような形」と表現しました）

　ロッドを前後にストロークする際に、それぞれのストロークの最後に手首を固定した状態でロッドを急停止して下さい。ロッドを止めることによって、ロッド先端からループが生まれます。それはまたロッドの先端がターンオーバー（曲がっていたロッドが逆方向に再び曲がる）して、ロッドが蓄えていたエネルギーが効率よくラインへと解放されていくのです。ロッドに蓄えられたエネルギーがラインをキャストします。良いフライキャスターになるためには、フォワードキャストとバックキャストの両方において、ロッドを急停止しなければなりません。

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「ロッドへの負荷」の図の説明
　ロッドにエネルギーを蓄えるには、力ではなく、タイミングが必要です。キャス
　トの際にロッドが曲がる感触を感じて下さい。後方へのストローク及び前方への
　ストロークの直後にロッドを急停止して下さい。
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　サイドアームで15分間キャストしたら、あるいはラインとロッドの感触に無理が無くなったら、ロッドを45度、そして垂直に立ててキャストしてみて下さい。これであなたは実際の釣りで使う全てのこれらのキャスティングポジションを使ったことになりますので、それに慣れて下さい。サイドアーム、45度、それとも垂直でしょうか。あなたはもっとも力を抜いてキャストできるポジションでキャスティングを楽しもうと思われるはずです。全てのキャスティングポジションにおいて、キャスティングの原理原則は全く変わりません。サイドアームキャストをすることでラインを見ることができますので、それによってタイミングやループのでき方を学ぶことができるのです。

【狙いを付けたキャスティング】

　ショートキャストの場合は、水面（あるいは芝生）の上、約４フィート＝1.2メートルを狙います。より遠くへとキャストする場合は、ラインとフライがターゲットへ届くのにより長い時間が必要となりますので、より上方へ向けてキャストします。ターゲットを精確に狙うことを学ぶという行為は、キャスティングを習熟していく際に必要不可欠のものです。芝生の上で的を狙ったり標的に当てたりする練習は、かなりの時間をかけて行うべきです。

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「狙いをつけたキャスティング」の図の説明
　もし風が吹いていないのであれば、目標物（けんぱぱ付記：ここでは魚あるいは
　魚が居そうなポイントを指していると思います）を直接狙わないほうが良いでし
　ょう。目標物の少し上空を狙うのです。キャストする距離が長くなればなるほど、
　キャストする方向をより高くする必要があります。
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「ロッドの先端の方向」の図の説明
　より遠くへキャストしようとすればするほど、キャストする方向も高くする必要
　があります。フライラインは、あなたがロッドの先端を止めた方向へと飛んでい
　くのです。（ショートキャスト＝斜め下方向へ。アベレージキャスト＝ほぼ水平
　方向へ。ロングキャスト＝斜め上方向へ。）
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　段階的に練習することで、最初の１時間の練習において、15から30フィートの距離までライン、リーダー、ヤーン（フライ）をキャストできるようになるでしょう。そうすれば、池にいるバスやパンフィッシュ（けんぱぱ付記：パンフィッシュというのは、例えばブルーギルのような、フライパンに丁度入るような小魚のことを指すのだそうです。）、あるいは川にいる魚へ向けてフライをキャストすることができます。
　キャスティングがうまくなるためには練習が不可欠ですが、１日15分（夏の間、毎日）練習すれば、一シーズンであなたも熟練のキャスターになれます。以下に、キャスティング練習や魚を釣るときに役に立つコツを紹介します。

　１．目を怪我から守るために保護のための眼鏡（偏光のサングラス）を着用して下さい。

　２．短い距離でうまくいくようになってから、より遠くへとキャストするよう（15フィ
　　　ート、それから20フィート、それから30フィートといった具合に）、ラインの長さ
　　　を伸ばしていって下さい。

　３．あなたのキャスティングを見て批評してくれる良いキャスターを見つけて下さい。

　次に、キャスティングにおける幾つかの基本的な問題点とその原因、そしてどうやってそれを修正するかをご紹介します。

問題：バックキャストが芝生や水面に落ちてしまう。
原因：ロッドの先端がより低いところまで行ってしまっているために、地面へとキャストしてしまっている。
修正：ロッドの先端を高い位置で止める。手首をしっかりと固定してキャストする。

問題：テイリングループ。
原因：ロッドのストロークが激しすぎるか速すぎる。
修正：よりていねいにストロークを行う。フォワードキャストのストロークへ移る前に、バックキャストが完全に伸びきるだけの時間を待つようにする。

問題：バックキャストの際にフライが切れてしまう。
原因と修正：テイリングループと同じ。

問題：標的に届く前に失速してしまう。
原因：ラインがたるんでいたためか、あるいは手首を固定していないキャストのために、力のないキャストになってしまっている。
修正：バックキャストへ向けてのピックアップの際にラインを張った状態からスタートする。バックキャストとフォワードキャストの際に手首をしっかりと固定してストロークするようにし、ストローク終了直後にロッドをピタッと止める。

以上

著者：？？？
出典：Fly Fisherman Magaine、1999年９月号の付録「Fly casting techniques」