あなたはフライキャスティングを始めたばかりですか？。それともあと１０フィート遠くへキャストしようと悪戦苦闘しているところですか？。

　どちらにしても、あなたは今以上にキャスティングを好きになるべきだということを、私は知っています。より遠くへ投げたいと願うことがないフライフィッシャーは、長続きしません。結局のところ、遠くへとキャストできる能力は、より生産性の高いフライフィッシングへと結びつくのです。深い穴に棲むあのスヌークが 少しイライラしている時や、引きこもっているターポンがそばにあなたを近寄らせない時がそうです。ですから、もしあなたが投げられる距離に不満をお持ちなら、基礎技術の向上を図る良いチャンスなのです。あなたは今、フライフィッシングを楽しめているとお考えですか？　ちょっと待って下さいね。

　初心者のかたは、良いキャスティングの基礎技術を初めから習得する必要があります。もしあなたが中級のキャスターなら、初心者だった頃に学んだ各種の技能を常に改善することができ、それによってより遠くへと投げられるようになります。そして、より遠くへとキャストすることを妨げている悪いキャスティングの癖を直すのに、遅すぎると言うことはないのです。

　もしあなたがまだそうしていないのなら、古いキャスティングマニュアルであなたが読んだ「時計の針の位置」についての全てを、今、忘れましょう。ロッドを１１時から１時の間で振るというやりかたは、狭い川ではうまくいくかも知れませんが、大きなソルトウォーターフライを投げる時や強い風の中でキャストする時にはうまくいかないでしょう。

　目標物（ターゲット）に対して４５゜の角度になるように、オープンスタンスをとることから始めましょう。このオープン・キャスティング・スタンスをとることで、あなたの前腕が体でブロックされることがなくなり、バックキャストの時にはるか後方へと腕をドリフトさせることが可能になります。そしてバックキャストの時にはるか後方までロッドを持っていくことで、フォワードキャストにおいてより長い距離にわたってロッドの先端部を前方へと移動させることが可能になり、長いラインをシュートするのに必要なラインスピードを得ることができます。もしあなたが右利きなら、左足を右足の前に置き、つま先を目標物へと向けて下さい。左利きのかたはちょうどあべこべにするだけです。ロッドをキャストしようとしているところへと向けて下さい。

　キャスティングアームをリラックスさせて、肘が体の横側に無理なくくるように丁度ウエストの上にもってきて下さい。グリップの先端側の部分の上部に親指をしっかりと置いて、手首をがっちりと固定して下さい。

　ロッドの先端部を水面近くにもってきたところからバックキャストを始めます。多くの初級者がこうすることを忘れています。もしウエストの高さか、あるいはもっと悪い場合には目の高さからスタートすると、ラインと水との間に生まれる張力がもたらす負荷によるロッドのエネルギーを十分に利用することができないでしょう。そうなると、良いシャープなバックキャストを実現するために必要なラインスピードが得られなくなります。

　ピックアップを始めるには、手と前腕をシャープに持ち上げて、大部分のラインを水面から持ち上げます。そしてこの動きをスムースに続け、リールが耳の高さで耳から３０センチのところへくるまで、後ろの上方へとゆっくりと加速します。このバックキャストの動きを行う時には、手を円弧状に動かさないで下さい。「直線的な軌跡で」動かすということは、即ち一つの面の中で動かすということです。固定していた手首を動かしたり「ふらふらさせる」ようなことはしないで下さい。さもないとループが広がったりラインスピードが奪われたりします。もし実際に手首を動かしてしまうと、ロッドを停止する時に、ロッド先端があなたの背後の地面へと向かってしまいます。そうなった時にあなたのラインとフライはどこへ行ってしまうか、想像できますか？　真っ直ぐに地面、あるいは水面へと向かうでしょう。初心者だった頃に背後の水面をピシャリと打たなかった人は居るでしょうか。フォワードキャストと同様にバックキャストにおいては−−あなたのラインは、ストロークの最後にロッド先端が指した方向へ向かうと言うことを覚えておいて下さい。

　もしこれまでのところで正しい動作ができていたなら、あなたのバックキャストは真っ直ぐな軌跡を描いて上方へと向かい、肩の高さの上のところで後方へとアンロールします（ループが解けていきます）。頭だけ振り返って、それを確認して下さい。ループは細くあるべきであり、それはあなたが行ったストロークが一本の直線にそった力によって方向付けられたことを示します。ループのボトム（下側）はフラット（真っ直ぐ）であるべきです。

　あなたのループが完全に解け始めたら、あなたの手を頭の後方且つやや上方に来るまで、後ろの上方へとドリフトさせて下さい。腕が伸びきるほどのはるか後方までドリフトさせず、あなたの肘は曲げたままにして下さい。ラインを見ると、真っ直ぐになっていることでしょう。もしラインを見ないなら、ロッドが引っぱられる感触が伝わってくるでしょう。熟練のキャスターならお判りの通り、この時がフォワードキャストを始める瞬間なのです。実際には、多くのキャスターはバックキャストが伸びきる直前にフォワードキャストを始めるのですが、そうすることでラインは下に落ちることがないのです。

　フォワードキャストを行うには、あなたの頭上の少し前にループが見えるまで手首を固定させたまま、前方且つやや空へ向かってロッドを押し出します。そして今、鋭く加速して、ロッドを停止させながら親指を少し下方へ押し出して非常に短い手首のスナップ（これがループを細くします）をかけます。素早い停止によってループが細くなり、ラインスピードと飛距離が増します。もしロッドの停止を全く行わず、単にロッドをターゲットへ向けて前方に移動させただけなら、ループは広がってしまい、全ては水の泡です。

　ロッドを停止させる直前に親指を押し出すことで、フライラインのループ、リーダー、そしてフライは、ループの下側のラインの上のところを飛ぶようになります。もし、目の高さの壁に釘を打つような感じで、単に前方へとロッドを押しただけなら、あなたのラインはテイリングループを起こし、ウインドノット（本当に悪いキャスティングにつきものの縺れですが）ができてしまうばかりか、当然のように全く飛距離が伸びません。私はこれら全ての「重要な親指の動き」のことを、親指の先端に付いたピーナッツバターの固まりを目の高さにある鏡へと塗り付ける動作にたとえています。

　前方への加速と親指の押す動作、そしてロッドの停止がうまく行えたなら、ループは細くなり、視界から素早く遠ざかっていくでしょう。ラインハンドの親指と人差し指で輪を作り、ターゲットへとランニングラインを送り出してやることによって、ループを飛翔させて下さい。キャスターの中にはこの時点でロッドハンドを高く持ち上げることで、ロッドを地面と平行にし、ロッド先端から出ていくラインの角度を小さくする人がいるようです。

　ここでは解くべき謎はまったくありません。科学は正直です。フライキャスティングにおいては、観察することが、上達の具合を評価する最良の方法です。もしあなたが飛距離に満足していないのなら、私が上に述べた方法に従っていないのですから、それらを試して下さい。もしあなたの基本的な技術が良いのなら、嘆いたり悲しんだりしないで下さい。経験に代わるものはありません。ほとんどのフライフィッシャーがそうであるように、繰り返す度に少しずつ距離が伸びていくでしょう。

　練習する場所は裏庭か水の上であるべきで、あなたの前に魚は必要ありません。基本をマスターすることができ、飛距離が伸び悩むようになってきたなら、遠投する際に必要不可欠な、より上級のホール及びダブルホールテクニックを学ぶ準備ができたと言えます。あなたが初心者であったとしても、ホールは少し距離を伸ばすのに役立つばかりか、直さなければならないキャスティングの問題を覆い隠してくれて、瞬時に満足感が得られるでしょう。