（この部分は、スティーブ・レイジェフにより寄せられた物です。彼は今日におけるオールラウンドのチャンピオンシップキャスターであり、アメリカ及び国際大会で数多く優勝しています。）

　私たちが精度（アキュラシー）や飛距離（ディスタンス）の面でキャスティングを練習する時、私たちの多くは重要な基本テクニックを評価することを忘れています。ディスタンスキャスター達はしばしば「力任せに振り回す」ことに頼り、一方でアキュラシーキャスター達は数え切れないほどの軽率且つ不完全なフォルスキャストを行っています。筋力や数多くの練習が重要である一方で、純粋に技術に対して努力を払うことはより良い改善をもたらすことでしょう。

　フライキャスティングは４つの主なカテゴリーから分析されます。それはループ、ストローク、テンポ、そして弾道です。

【ループ／The Loop】

　本当に良い、狭いループが無ければ、それ以上のことは起こらないでしょう。コントロールされた狭いループは、前後両方へのキャストにおいて、最も優先されるべき要件です。ループの大きさは、ロッドの先端部が前後に動く時の道筋によってコントロールされます。直線的な道筋であるほど、ループの幅は狭くなります。ほとんどのキャスターにとって、バックキャスト時のループは前方へのループよりも注意が必要です。バックキャストのループを改善する鍵は、キャスターがロッドを急激に停止できるかどうかにかかっています。この動きはロッドが曲がることで蓄えられたエネルギーをラインへと伝達し、幅の狭いループを作るのに役立ちます。ラインの長さに応じて、ロッドを停止する精確な位置は、１２時から２時の間で変化します。ラインが長くなればなるほどロッドは大きく曲がり、より後方へと移動させることが必要となり、直線的な軌跡を保つのに役立ちます。また、キャストの長さに応じて、短い距離へのキャストではわずかなドリフト、長い距離へのキャストでは長いドリフトが必要で、それはまたロッドの長さや硬さによっても変える必要があります。より長く、そしてより硬いロッドは、ストロークにおいてより激しく力を入れることを許容し、より速いラインスピードをもたらします。そしてストロークをかなり短くすることが可能になります。柔らかいロッドはより長いストロークとより大きなドリフトを必要とします。

　バックキャストにおける急激な停止は、ロッド先端部の軌跡を直線状にするのに役立ちます。典型的な初級のキャスターは、ロッドがバックキャストのポジションに来たときに手や手首をリラックスさせてしまいます。このリラックスは広いアークあるいはロッド先端のカーブした軌跡をもたらし、より幅広いバックキャストループになってしまいます。

　ディスタンスキャストにおける最終のフォワードキャストのループは、ロッド停止の直後にリストを回して少し前方へロッドをドリフトさせることによって改善することが可能です。非常に優れたキャスターはループの先端部をＶ字形状にしていますが、これはこのかすかなフォロースルー・ドリフトによってもたらされたものです。このほんの少しのドリフトと同時にグリップを握る力を緩めることで、反動によるロッド先端の曲がりを吸収し、衝撃波を極力抑えてループの幅を狭くしてくれます。

　幅の広いループは良くないですが、テイリング・ループはもっとダメです。キャスターのそれぞれは、フライがラインに引っかかったり、あるいはフライがリーダーに重なってしまうなどの、大きな問題を経験していることでしょう。これが悪名高きテイリング・ループなのです。テイリング・ループは、直線的な軌跡の下までロッドの先端が曲がってしまった結果から生じます。広すぎるループの裏返しとも言えます。短すぎるストロークにおいて力を入れすぎるとロッドに過負荷がかかり、直線的な軌跡の下までロッド先端部が下がり、テイリング・ループを起こすのです。ストローク全体にわたってパワーを分散し、ストロークの長さも長くすると、テイリング・ループを減らしたり無くすことが可能になるでしょう。

【ストローク／Stroke】

　一般的に、ストロークはフライキャスティングを改善する時の二番目に決定的な側面です。ストロークの間におけるストロークの長さや腕の位置を解析すべきであり、もう一人のキャスターあるいはコーチに補助してもらうことは、この場面で本当に役に立ちます。

　近くにある目標物へと精度良くキャストする場面においては、手は体の前にあるべきであり、肩の正面か、体の中心へと少しずらしたところが良いでしょう。ダーツの的（まと）へとダーツをトスする場面を頭に描いて下さい。トスする時の良いポジションは、丁度目の前か、あるいは少し肩のほうへずらしたところでダーツを持った手を保持することです。キャスティングは同じようなポジションです。

　ラインの長さを延ばし始める時には、体の横へと少しずつ外側に手を移動させていって、より長いストロークを容易にします。野球での投球フォームを頭に描いて、２５フィート、７５フィート、次に１２５フィート、そして最後にはセンター奥深く〜ホームプレートへと投げなければならないことを想像して下さい。より長いラインをキャストする時、同じように私たちはストロークを長くし、大きく振りかぶります。
　キャスターにとっての最も快適且つパワフルなストロークを得られる姿勢を見つけるには、他の人に補助してもらうことがとても役に立ちます。キャスターがバックキャストのポジションで静止し、補助者はキャスターの真後ろに立って、ロッドのグリップのすぐ上のところを握ります。フォワードストロークに対して抵抗を与え、補助者はロッドを後方へと保持する一方で、キャスターは手と腕を上げたり下げたり、肩から近づけたり遠ざけたりしながら前方へと力を入れて、ストロークを行います。この練習を通して、キャスターは最も快適な動作範囲を探せるでしょう。最も「自然な」投げるフォームにすることで、より速いスピードが得られますので、より良いキャストが得られるのです。

　ストロークについてつけ加えると、キャストの際の垂直から水平までのロッドの傾き（オーバーヘッドからサイドアームへ）はストロークに影響するということです。より垂直にロッドを立てることで方向をコントロールしやすくなる一方で、キャストの際にサイドアームへと傾けたときにより大きな力が得られます。風の状態やロッドの硬さ、そしてリーダーのデザインや、リーダーがどれくらい速くターンオーバーするかによって、最適なコントロールを可能にするためにロッドを垂直に振るかサイドアームで振るかが変わるのです。

【テンポ／Tempo】

　ループとストロークについて見てきましたので、次はキャストの際のテンポあるいは周期の評価について強調したいと思います。多くのキャスターは前後にキャストする時に少しタイミングが遅すぎる傾向があります。たぶん私たち一人一人は、バックキャストを焦って行っている（ラインとリーダーを真っ直ぐに伸ばさない）ことに気づいているために、スローダウンするのでしょう。スローダウンする代わりに、実際のストロークを速くして、バックキャストでラインが伸びるまで同じ時間を待つようにするほうが良いでしょう。ラインが速く動けばロッドの作用をよりはっきりと感じることができるようになり、風の影響を減らすこともできます。あなたが次にアキュラシーキャストの練習をする時には、テンポをあれこれと変えてみて、より速い周期でのキャストを試してみて下さい。ピシッという音を止めるには、リーダー・ティペットを長くする必要があることにあなたは気づくかも知れません。ラインスピードを上げると、リーダーはより強烈にフライを弾き飛ばすでしょうから、ティペットの調整がパワーとスピードの増大を補正する方法なのです。

【弾道／Trajectory】

　最後に弾道について考えてみましょう。アキュラシーキャストにおいては、地面にぶつからない程度に十分高くキャストすべきですが、目標物のすぐ上のところでフライが見えるくらいにできるだけ低くキャストし、奥行きや距離を把握しやすくする必要もあります。ディスタンスキャストを行うときは、弾道とオーバーハングは状況に応じて調整しなければなりません。風の強い日には弾道を高めにし、長めのオーバーハングを使います。穏やかな天候の日にはキャストを低めにし、短めのオーバーハングを使うことを試して下さい。

　オーバーハングの調整は、キャストしたラインが飛んでいる間にシューティングヘッドがどれくらいの速さでターンオーバーするかによって変わります。オーバーハングが短かすぎると、シュートしている間にヘッド部が早いタイミングで真っ直ぐになってしまうでしょう。ヘッドの後端はヘッドの先端部よりも重いですから、飛んでいるうちにヘッドの後端が先端に追いついてしまい、結局はヘッド全体が大きなスパゲッティの折り重なりのようになって地面に落下するのです。オーバーハングが長すぎると、キャストしたラインが地面に落ちる時にループが伸びきらないでしょう。

　釣りに使うシューティングヘッドは比較的短く、非常に早くターンオーバーするので、釣りをする時にオーバーハングの調整は最も重要です。シングルハンド及びダブルハンドのフライ遠投競技の場合、いずれの場合もやや長いヘッドを使いますが、オーバーハングの調整は依然として重要です。でもそれほど大きな長さの調整は必要ありません。

　ループ、ストローク、テンポ、そして弾道は、良いフライキャスティングにとって鍵となる要素であり、キャスティングを行う時にはいつも評価するだけの価値があるのです。

Copyright 1988 Steve Rajeff