今度はレフティー・クレーという超有名フライマン（キャスティングでも釣りでも有名です）がFly Fisherman誌（99年9月号）に書いた記事を和訳してみました。

　今回のテーマは「両手を使ったキャスティング」です。両手と言ってもダブルハンドロッドのことではなく、シングルハンドロッドを使ったダブルホール及びシングルホールについてです。ということですから中級者以上が対象になると思いますが、これからダブルホールを学ぼうと言う人にとっても有益だと思いますよ。

　（注：ホール（haul）というのは「引っ張る」という意味です。ダブルホールというのはバックキャストとフォワードキャストのそれぞれで一回ずつラインを引く動作を行うことで、ラインのスピードを格段にアップする方法のことです）
　
　今回の記事にはダブルホールにおける「ラインハンドでラインを引くという動作」の役割やコツが判りやすく説明されていますので、上級者のかたも含め、是非一度お読み下さい。

ではごゆっくり。

　この記事につきましても念のために書いておきます。あくまでもプライベートな目的で翻訳したものです。営利目的でここから転載することは絶対にしないでください。

フライフィッシャーマン誌、スペシャルセレクション、あなたの技術を向上させる

タイトル：
両手を使ったキャスティング

サブタイトル：
あなたのキャスティングの効率を上げるためには両手をどのように使えばよいのか

　経験が豊富なフライフィッシャーは、フライキャスティングが両手を使ったスポーツであることを知っています。一方の手（ロッドを持つ手／ロッドハンド）でロッドをコントロールし、残った手（ラインを持つ手／ラインハンド）でシングルホールあるいはダブルホールを行います。残念なことに、多くのフライフィッシャーたちは、両手を有効に使っていません。

　私たちの多くは、そこそこの距離のキャスティングはとてもうまくできるのですが、ロングキャストが必要な時、動作がバラバラになってしまいます。ここでよくみられる失敗をまとめてみますと、一回あるいはそれ以上の回数のフォルスキャストを行うとき、ループはうまくコントロールされ、ラインの扱いもうまくいきます。そして最後に超ロングキャストを行ったとき、とても悲惨な状況になってしまいます。ラインにはショックが加わって全体が波打ってしまい、リーダーはゴチャゴチャに絡まって水面に落下します。さて何が起きたのでしょうか。きっとあなたは一方の手（ロッドハンド）を使いすぎ、もう一方の手（ラインハンド）を十分に使わなかったのでしょう。

　ロッドハンドの主たる役割はラインのループとキャストする方向をコントロールするというものです。これに対して、ラインハンドの主たる役割はラインスピードを上げるというものです。この記述については、多くのキャスターが信じている事実に反するものかも知れませんが、もしあなたがこれに従うなら、私が申し上げたいことをお判り戴けると思います。

　あなたがロングキャストを行う時、ラインハンドはシングルホールあるいはダブルホールを行います。ここでホールがどんな効果を持っているのかを説明しましょう。まず、フライラインが前方あるいは後方で真っ直ぐに伸びた瞬間、あるいはループが伸びた瞬間から、フライラインは落下し始めます。より遠くまでキャストするためには、ラインが完全に伸びる、あるいはループがアンロールする（ほどけて伸びきる）前に、フライラインを目標物に届かせなければなりません。これを実現するための唯一の方法は、ラインをより速いスピードで飛ばすことです。ホールを行うとき、あなたが行うべきことは、ロッドの先端を加速することです。もしラインをより速く飛ばしたいなら、あなたは（ホールの長さではなくて）ホールのスピードを増さなければなりません。このコンセプトを理解すれば、あなたはもっと遠くまでキャストすることができ、その他の困難な状況でのキャスティングもうまくこなせるようになれます。
　

【距離を伸ばすためには】

　ここからはキャスティングの距離をどうやって伸ばすかについて説明します。フォルスキャストを行う時に、目標物へ向けてループをうまくコントロールしながら、ロッドの先端のできるだけ外側をラインが飛ぶようにして下さい。そして最後のキャストを行うときに、これといって余計な努力をしないで下さい。その代わりに、ダブルホールを（より長くではなく）より速く行って下さい。これによってロッドの先端がより速く動くようになり、ラインスピードを上げることができます。最もありがちなのは、両手に余計な力をいれてしまうことです。それはやらないで下さい。フォルスキャストを行うときにロッドハンドに余計な力を入れないようにし、ラインハンドを加速するだけにして下さい。

　ラインを引く動作（ホール）は、ロッドの加速／停止の最後のところ（the final speed - up - and - stop）と同時に行うようにすべきです。（多くのキャスターは、「ロッドの加速／停止」の動作のことをパワーストロークと呼びます［編集部］）　もしホールがロッドの加速／停止の前に始まったり、あるいはロッドの加速／停止の後にも続いてしまうと、キャストの効率は落ちてしまいます。

　長いホールはロッドの先端が大きな弧を描いてしまうという問題を起こし、結果的に、より大きなループができてしまいます。この結果、キャストするエネルギーをループのカーブ部の全体にわたって（とても非効率に）放出してしまい、目標物へと（効率よく）向けることができません。急停止するすることで、ロッド先端のスピードを著しくアップすることができ、結果的にラインスピードを上げることができます。それはまるで、ペイントブラシから塗料の飛沫を飛ばすことに似ています。大きく振り回すと、塗料はそこらじゅうに飛び散ります。うまく加速していって急停止すると、一つの方向へ全ての塗料を飛ばすことができるでしょう。

　バックキャストとフォワードキャストを行っている最中はいつもロッドに負荷がかかるようにラインを引っぱっておくことができますが、加速／停止を行う瞬間まで、ラインをホールする動作を遅らせるべきです。こうすることによって、よりタイトな（幅の狭い）ループを作ることができ、ロッドの先端のスピードを著しく改善することができます。

　両手を使ったキャスティングによって、より長いラインをキャストする能力を改善することができ、その他のフライフィッシングでの問題を克服するのに役立ちます。ここに幾つかの例を示します。

１．水面にかなりの長さのラインが横たわっており、簡単にピックアップできないくらい長いとします。多くのアングラーは、ロッドを下げて力一杯ロッドを振ってバックキャストへとラインを持ち上げようとするでしょう。このような方法だと、幅の広いバックキャストになってしまい、フォワードキャストへとラインを運ぶことはほとんど無理です。そうするのではなく、ロッドの先端を水面近くまで下げておいてから、素早く持ち上げるようにし、水面から全てのラインを引き離すようなことはしないで下さい。あるいは、ロッドハンドでは普通に加速／停止を行いながら、ラインハンドを使っていつもよりも速く、そしてより短いホールを行って下さい。ラインは素早く後方へ伸び、フォワードキャストの準備が整います。

２．あなたは規模の小さな渓流に居て、プールのはるか端のほうまでフライをキャストする必要があるとします。そしてプールの上には木の枝が覆い被さっており、幅の狭いループで、低く伸びのあるキャストを行う必要があります。ロッドハンドに余計な力を入れるのではなく（もしそうしてしまうと、幅の広いループができてしまいます）、ロッドハンドを普通に使って幅の狭いループを作りながら、ラインハンドを使ったホールを加速して下さい。こうすることで、木の枝の下にあるターゲットへ向けて、フライを送り込むことが可能になるでしょう。

３．あなたは丁度フライの交換を終えて、目の前の水面にフライラインのコイルが横たわっているとします。もしラインの弛みがそんなに多くないならば、ロッドハンドを使うとともにラインハンドで非常に速くて短いホールを行うだけで、バックキャストをコントロールすることができます。これによってうまい具合にバックキャストへとラインを運ぶことができ、フォワードキャストの準備が整います。もしバックキャストの時にもラインを伸ばす（シュートする）必要がある場合には、ホールのあとでラインハンドを緩めてラインを送り出して下さい。

　より大きなラインスピードを得る必要がある場面以外にも、ラインのループや方向をコントロールしなければならない場面があるでしょう。ロッドハンドはラインのループと方向をコントロールし、ラインハンドはロッドの先端の速度をアップするために短くて速いホールを行うという原理を使えば、そういった場面を克服することができます。試してみて下さい。きっと驚き且つ喜ばれると思いますよ。

レフティー・クレー／Lefty Kreh

出典：Fly Fisherman Magaine、1999年９月号の記事「Two handed casting」