先日、私はスポーツショーのディスタンス競技に参加し、競技者たちを間近で見る機会を得ました。ある女性は、５番のウエイト・フォワード・ラインを室内で90フィートキャストしていました。優勝した男性の飛距離は102フィートでした。興味深かったのは、２年前の同じショーで、女性の投げた距離90フィートが、３人の男性以外を全て打ち負かしたことでした。'96年のその時の優勝者は96.9フィート、2位は95.3フィート、3位は90.3フィートであり、他は70から80フィートでした。男性の予選通過ラインは85フィートで、男性のほとんどは決勝に進む記録を出せませんでした。今年、男性の予選通過ラインは、キャスティングを行う時に競技者が立つ場所（プラットフォーム）によって異なる80フィートプラス数フィートだったのですが、上位10名だけが決勝に進出しました。第２位の男性は98フィート6インチを投げ、他に3名が90フィート以上を投げました。

　この競技では、私にとって２つの興味深いできごとがありました。

　女性は身長６フィートの痩せ形でした。彼女は、私が「サム・オン・ザ・トップ」と読んでいるグリップを使っていたのに、肘でリードするテクニックを使ってキャストしていましたが、彼女は体の動きをそれほど使わず、ほんの少しオープン気味のスタンスを使っていました。しかし正面から見ると、他の全ての男性及び女性の競技者の中で、最も真っ直ぐなキャスティング・ストロークだったのです。競技者のほとんど全員が、バック・ストロークにおいて著しく曲がった軌跡を描いていました。シューティング・ヘッドを使って参加していたある男性は、バック・キャストの最後のところで、ロッド先端部を彼の左側２フィートくらいのとこまで振っていました。このような動きはもちろんのこと、前方へのキャストに際しては、自分自身の首を切らないように、かれの頭の周りで曲線状にロッドを振ることを必要とします。このようなまずい状態にあるのは彼だけではありませんでした。シューティング・ヘッド種目の優勝者以外の男性のうち数人だけが、肘でリードする方法を使っていました。肘でリードするこの動きは、野球のボールを投げる方法であり、世界的なチャンピオンであるスティーブ・レイジェフによって提唱されました。彼はこの方法を彼のページで説明しており、このページのどこか他の場所からリンクされています。あなたは、優勝した女性が使ったストレート・バックキャスト・ストロークと、肘がリードするフォワード・ストロークから、あなた自身の結論を導き出すことができるでしょう。

　もう一つ興味深いことは、数人のキャスターが使っていたロッド先端でのスナップの大きさでした。フライラインを使ったディスタンス競技においては、前方への弾道を下方に維持することが成功の秘訣とされているのですが、ラインを真っ直ぐに伸ばすためには必要なバック・キャストでの激しいスナップは、高いバック・キャストの大敵なのです。スナップはラインを下方へと運びますので、より短い後方へのストロークから高く真っ直ぐなラインを後方にキャストするために適切な力を得ることは、絶え間ない戦いになるのです。私たちは一人のキャスターが非常に大きなスナップを使っているのを目にしましたが、そのスナップは不幸にも彼の後方の地面へとラインを運んでいました。コースの脇に立って、高いところへのキャストでヤーンフライが10ないし15フィート後方に落ちるのを頑張って見ようとすることに畏怖の念を抱いたものです。これは、ウエイト・フォワード・ラインのフロント・テーパー部が、もっと太いボディ部よりもゆっくりと落ちることが原因で起きます。横から見ると、テーパー部やリーダーがまだ随分高いところにあるのに、ボディ部が地面を叩いているのです。このような曲がったラインは、本来、空中で得ていたはずの飛距離を奪ってしまいます。もしこれらのキャストが、高いバック・キャストではなかったとしても、低かったなら、彼らはあと10フィート遠くまでキャストできたことでしょう。トーナメントキャスティングにおける、これと最も近いことは、バスバグを使っての70フィートのキャストです。より高いキャストを使えばラインスピードをより簡単に得られると考えがちですが、上方へのキャストは、バスバグとラインが風にあおられる機会を増やし、目標物にうまく落とせなくなるのです。バスバグ・キャスターの優勝者を見てみると、彼らの多くはバック・キャストを高く上げ、前方へと坂を下るようなキャストを行ってバスバグを飛ばし、最後の10フィートかそこらは水面上でラインをロールさせて、目標物へとバスバグを落としています。その方法では、バスバグは風で横にあおられることはなく、力を入れすぎたとしても、ラインの下に挟まれたり、キャスターのほうへ戻ってくることはありません。もしあなたが実際に釣りに出かけたなら、このキャスト方法はバスバグの到着をバスに知らせてもくれるのです。

　ここではロッド先端のスナップについて話をしていますので、このスナップについてのジム・グリーンの注意点を参照しておくと良いでしょう。それはhttp://anglers-supplies.com/ts_green.htm/frontpageにあり、私が「ロッド先端のスナップ（tip snap）」と呼んでいるものを「積極的な停止（positive stop）」と称し、「フライ・キャスティングの秘訣」であるとしています。私たちはクラブのキャスティング・コースにおいて、生徒たちにジムの論文を渡してきましたが、今では絶版になっており、お金を払って中古のものを５回にわたって購入してきたものを減らしつつあります。私たちは彼の述べているキャスティングの原理についてもう少しお話をしたいと思います。（＊けんぱぱ注）

　ほとんどの男性は、それほど長いシュートを期待せず、75フィートかそれ以上のできるだけ長いラインを出してフォルス・キャストを行おうとしています。一部のかただけが、よりコントロールされた、より短いフォルス・キャストと、より長いシュートに頼っています。どちらのアプローチが優れているのかの判定はまだ出ていないのですが、長いラインを出したフォルス・キャストのほうに分があるようです。

　フライラインを使った遠投というのは、組織だって行なわれているトーナメント・キャスティングの競技会では正式種目になっていません。そこではシューティング・ヘッドが遠投用のラインです。

　シューティング・ヘッドの種目では、男性による屋内での137.5フィートが優勝記録でしたが、彼は310グレインの重さで50フィートの長さのシューティング・ヘッドを、屋外ではもっと遠くへ投げます。その時に使ったシューティング・ヘッドは実際には９番の重さ、即ち280グレインであり、ロッドも全て９番用でしたが、これは会場の大きさに合わせたものでした。２年前、10番のシューティング・ヘッドと10番のロッドを使って、優勝者は133フィートを投げていました。この混沌とした状況の中から、どちらがはっきりとした結論をもたらしてくれるでしょうか。ひたすら練習あるのみかも知れません。