今まで使っていたオンキョーIntegra A-817XDは、2012年にジャンク扱いの中古品で入手したものです（修理記録はこちらを参照）。リモコン機能は無く、ボリュームの上げ下げをアンプの近くまで行って手で操作しないといけないのが面倒くさくなってきました。そこで、リモコン機能が付いていて、グレードを落とさずに、値段も手ごろな品物が無いかと会社帰りに行きつけのリサイクルショップに行ってみたところ、、、、ジャンク商品の中にありました。オンキョーIntegra A-917Fが。1992年発売のモデルということで、A-817XDよりも4年新しい機種です。リモコンも取説も付いて10k円。ジャンク扱いの理由がインプットセレクターが勝手に切り替わってしまうという、この世代のオンキョーのアンプにありがちな不具合（というか、A-922MLtdで経験済み。修理記録はこちらを参照）。フロントパネルのデザインが私好みだし、目立った傷も見当たらないということで、さっそくゲットしました。

　自宅に戻って音出ししてみたところ、インプットセレクターの動作には特段問題がなく一先ず安心。しかし、Source Directつまみを少しでも動かすと音が割れたり音量が大きくなったり小さくなったりすることが判明。いつもながらジャンクにはジャンクの理由がちゃんとありますね。これはきっとA-922MLtdと同じくSource Directスイッチの接触不良が原因と判断。直ちに分解修理に着手しました。

　（追伸）Source Directスイッチの接触不良はその後再発していませんが、インプットセレクターが勝手に切り替わるという症状が1か月後に出ました。これもA-922MLtdで経験済みだったので、対応できました。１１項目以降に分解修理写真を追加しました。

　（追伸２（2025.06.01））2018年に修理した箇所の異常はその後出ていませんが、2023年頃から「片方のチャンネルの音が出ない、電源を入れてしばらく音出ししていると左右とも鳴り始める」という症状が出始めました。だましだまし使っていたところ、2025年になって片方のチャンネルの音が完全に出なくなったため、本格的な修理に着手しました。結果、メインアンプ基板のトランジスターと、プリアンプ基板の抵抗のはんだに酷いクラックが見つかりました。見つけた個所のみ再はんだしたところ、無事に復旧しました。１６項目以降に分解修理写真を追加しました。

　あくまでも素人が行った作業の経過を記録したものです。もし参考にされた皆様に損害などが発生した場合でも、当サイトの管理人は関知いたしませんので、悪しからずご了承ください。

１．作業台の上にアンプを載せ、まずはサイドパネル左右とトップカバーを外します。

２．正面パネルを外すには、インプットセレクター、ボリューム、ソースダイレクトのツマミを抜き取る必要があります。このあと上下ひっくり返した状態で底面のインシュレータ４個と底板２枚（写真なし）を外します。黒く塗装された正面パネルを外すには、上下にあるねじを外します。

３．正面パネルを外した状態です。問題のソースダイレクトスイッチ（右側）のほか、ボリュームコントロール（中央）、インプットセレクター（左側）が見えています。

４．ソースダイレクトスイッチを内側から見たところです。ボリュームコントロールと同じ基板に載っており、このままではスイッチを取り外すことができません。正面側の内部フレームを正面側に引き出して基板を外して裏返す必要があります。まずは内部基板とつながっているケーブルのコネクター（P353A、P209、P210、P211の4か所）を外しました。ケーブルを束ねているインシュロックも幾つか切断し、ケーブルに余裕を確保します。

５．正面パネル右下にあるMM/MC切り替えスイッチとレコーディングセレクタースイッチも外しました。ノブを外し、リングナットを外します。

６．正面側の内部フレームは、内部の骨組みと9個のネジで固定されています。それらを外し、内部フレームを正面側に引き出したところの写真です。あと一息です。

７．ソースダイレクトスイッチとボリュームコントロールを載せた基盤を内部フレームから外すには、ボリュームコントロールを固定しているネジ4本、基板を支える金具を固定しているネジ1本、ソースダイレクトスイッチを固定しているネジ2本、そしてLEDインジケータを固定しているネジ1本を外します。上の写真は外す前、下の写真は外した後です。やっと基板がフリーになりました。。

８．基板をそっと持ち上げて裏返しました。S351と書いてある半田の列が問題のソースダイレクトスイッチです。これを根気よく半田吸い取り線と半田ごてを使って外していきます。40個の端子とスイッチ固定部の4個、合計44個を丁寧にフリーにすると、、、、、スイッチが基板から外れます。

９．取り外したソースダイレクトスイッチです。逆ハの字になっているカシメ部をラジオペンチで緩め、スイッチを解体します。このときスイッチのポジションをどちらか一方へ一杯に回しておくことと、外した時のスライダーの位置を写真などで記録しておくと、組み立てるときに悩まずに済みます。

１０．外した直後の接点の状態です。グリスが塗られています。しゅう動する部分が黒く変色しているのがお分かりいただけると思います。グリスをふき取り、爪楊枝に金属磨きを付けて表面を磨きました。スライダーのほうはスライダーに厚紙を挟んで、金属磨きを少し付けて磨きました。金属磨きを洗い油で洗い、接点復活剤を塗って、復旧しました。このあたりの詳しい方法はA-922MLtd（こちら）のときと同じです。このあとは、Source Directスイッチを組み立て、基板に戻して44箇所の半田付けを行い、分解時の逆の手順で組み立てていきます。リペアが終わった状態で音出しし、Source Directスイッチを動かしたときの音の異常が解消したことを確認しました。

１１．ここからはインプットセレクターが勝手に切り替わってしまう症状の修理です。修理の方法はA-922MLtd（こちら）のときと同じです。６項の状態から内部フレームを更に引き出して、インプットセレクターが搭載されている基板を内部フレームから外します。

１２．裏返した基板からロータリースイッチを外します。4回路3接点のようですね。内周側4か所、外周側12か所の半田を、はんだ吸い取り線を使って丁寧に外します。

１３．外したロータリースイッチを解体します。ハの字に加締めてある部分をペンチで閉じれば分離できます。

１４．外した直後の接点の状態が上の写真です。しゅう動する部分が黒く変色しているのがお分かりいただけると思います。グリスをふき取り、爪楊枝に金属磨きを付けて表面を磨きました。下の写真は接点を磨いた後の状態です。金属磨きを洗い油で洗い、薄くグリースを塗って復旧しました。。

１５．分解したロータリースイッチを組み立てて、元の基板に半田付けしました。このあとは、Source Directスイッチを搭載した基板を元の位置に固定し、分解時の逆の手順で組み立てていきます。リペアが終わった状態で音出しし、インプットセレクタースイッチが正常に動作することを確認しました。

１６．2023年頃からでしょうか、右チャンネルのスピーカーからの音が歪み気味になりはじめ、やがて「電源を入れた直後、右チャンネルからの音が出ない。しばらく音出ししてアンプを暖めると鳴り始める」という症状が現れました。だましだまし使っていたところ、2025年になって右チャンネルの音が完全に出なくなりました。このアンプも30年選手になって、いよいよ買い替えもやむなしかと諦めかけていたのですが、Google検索で「A917F　修理」で調べたところ、この機種ではんだクラックが起きる箇所が紹介されているのを発見。これが決め手になり、全く同じ箇所にクラックが生じていたことがわかりました。今回もまた先駆者の貴重な情報に感謝です。この場をお借りしてお礼申し上げます。有難うございました。

　（ちなみに出力リレーの取り外し・接点確認・清掃も行いましたが、今回の事象の原因ではありませんでした）

　下の一枚目の写真はアンプの底板を外してプリアンプとメインアンプの基板（修理作業着手前）をはんだ面側から撮影した写真です。上寄りの黄色い楕円で囲った部分がメインアンプ基板のトランジスタ（Q623/625,624/626）、右下寄りの水色の楕円で囲った部分がプリアンプ基板の抵抗（R901,902）です。それぞれの箇所のクローズアップ写真（修理作業着手前）を二枚目、三枚目に示します。今回クラックが見つかった箇所の周辺は、基板の色がやや茶色く変色していることから、アンプの運転中に結構な発熱が当該素子において起きていることが窺われます。発熱ははんだの結晶組織の変化（再結晶等）を招き、強度が落ちていたところに「運転（発熱）・停止（冷却）の繰り返しによって金属疲労が蓄積」し、クラックの発生・進展に至ったのでしょう。

１７．まずトランジスタ。最初の二枚はQ624/626の再はんだ前と再はんだ後。それに続く二枚は同様にQ623/625です。部品面側からこれらの素子に少し力を加えると、はんだ面側に突き出たリードがわずかに動いたことで、はんだクラックの存在を確認できたのですが、Q624/626よりもQ623/625のほうがクラックの程度が酷かったことから、これが「右チャンネルからの音が出なかった原因」なのではと推察します。

１８．そして抵抗。最初の二枚は（写真での）右側の再はんだ前と再はんだ後。それに続く二枚は同様に（写真での）左側です。R901の左側は完全に外れていました。トランジスタと同様、これらの抵抗も、部品面側から力を加えたときにはんだ面側のリードが動き、酷いものは「突き抜けるくらい」動くようになっていました。これでは健全な動作は期待できません。回路図を理解しているわけではありませんのでこれらの抵抗がどのような働きをしているのかわかりませんが、片方のチャンネルに異常が出た「もうひとつの原因」だったのではと考えています。

１９．再はんだは年式の古いアンプの修理の基本であり、はんだ付けされている箇所をすべて再はんだするのが理想だと思います。今回それも考えたのですが、どこが悪いのかを突き止めないまま手あたり次第に手を入れることで逆にトラブルの原因を作りかねないと考えて、明らかに異常だった箇所のみの修理にしました。再はんだの際は、はんだ吸い取り線で古いはんだを概ね取り除いたあと、音響部品用として売られているはんだではんだ付けしました。また長期間の使用とはんだ付け作業のために茶色く変色したフラックスは、フラックス洗浄剤にてきれいに仕上げました。

　修理後に音出しして、歪みの無い音の素晴らしさが蘇った！という喜びがこみ上げてきました。片方のチャンネルの動作に異常があると、２チャンネルステレオで音源を再生した時の「音像の定位」が失わるのでしょう。修理によって回路の動作が正常に戻ったことで、音源本来の持つ「音」というのがこんなにも素晴らしいものだったのかと実感。しばらく聴くのを諦めていたアナログレコードを立て続けに何枚もターンテーブルに載せ、しばし音楽にどっぷりと浸る時間を過ごしたのでありました。

　ジャンク品の割に症状が軽微で、簡単な修理で復旧できてよかったです。

　A-817XDと入れ替え、アナログレコードプレーヤー（DENON DP-55L）とCDプレーヤー（Marantz SA8004）、スピーカ（「センモニ」ことヤマハNS-1000M）との組み合わせで、音楽鑑賞用のメインシステムとして使っています。

【プリメインアンプ（ONKYO Integra A-917F）】
症状①：ソースダイレクトスイッチを触ると音が割れたり音量が急に大きくなったり小さくなったりする
原因①：ソースダイレクトスイッチの接触不良
処置①：ソースダイレクトスイッチを解体して接点を磨いて復旧